BOOK · VOL.11
名作、いまを歩く Vol.11 手紙は、もう届かない: 舞姫を現代に置いたなら
名作、いまを歩くを見る会社から将来を期待され、ベルリンへ派遣された大田悠介。そこで出会ったダンサー・エリカは、彼を肩書きではなく「Yusuke」と呼んだ。昇進を伴う突然の帰国命令を前に、残るのか、帰るのかを決められないまま時間だけが過ぎていく。森鷗外『舞姫』に着想を得て、仕事、恋愛、海外赴任、選択、そして選ばなかった人生を描く現代小説です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.11
- テーマ
- 名作を今の物語として読む
- ASIN
- B0HHYFXZ5L
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『名作、いまを歩く Vol.11 手紙は、もう届かない: 舞姫を現代に置いたなら』より
大田悠介がベルリンへ来たのは、三十四歳の春だった。成田からフランクフルトへ飛び、そこから乗り継いでベルリンへ。空港の出口を出た瞬間、頬に冷たい風が当たった。 「寒いな」 最初に出た感想は、それだけだった。人生が変わる予感とか、海外で働く高揚感とか、新しい自分になれる期待とか。もっと何か特別な気持ちになるのだと思っていた。けれど実際には、スーツケースの車輪が歩道の継ぎ目に何度も引っかかり、ホテルまでのタクシー料金が予想より高く、会社へ領収書を出せるかどうかを確認した。
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