BOOK · VOL.12
名作、いまを歩く Vol.12 こころを預けたまま: こころを現代に置いたなら
名作、いまを歩くを見る大学三年生の祐真が喫茶店で出会った、四十七歳の瀬野。人生について静かに語る彼を、祐真はいつしか「先生」と呼ぶようになる。しかしある日、先生が二十年以上誰にも話せなかった友人との過去を綴った四十二ページの文章が届く。夏目漱石『こころ』に着想を得て、友情、嫉妬、罪悪感、秘密、そして誰かに心を預けることを描く現代小説です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.12
- テーマ
- 名作を今の物語として読む
- ASIN
- B0HJK8VNDQ
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『名作、いまを歩く Vol.12 こころを預けたまま: こころを現代に置いたなら』より
高瀬祐真がその男を初めて見たのは、大学三年の六月だった。雨の日だった。駅から大学まで歩けば十五分。傘を持っていなかった祐真は、途中にある古い喫茶店へ逃げ込んだ。店の名前は「水明」。 入り口のガラスには金色の文字。店内には濃い茶色のテーブルと赤い布張りの椅子が並び、壁にはいつから掛かっているのかわからない風景画があった。学生向けの店ではない。コーヒーは一杯六百五十円。 祐真にとっては少し高かった。けれど雨宿り代だと思えば、払えないほどではなかった。 「ブレンドお願いします」
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