BOOK · VOL.14
名作、いまを歩く Vol.14 雪の日、言えなかったこと: 雪女を現代に置いたなら
名作、いまを歩くを見る十年前の記録的な大雪の日、山中の民宿で水野湊を助けた女性・由紀は、「私に会ったことは、誰にも話さないで」と言い残して消えた。三年後、東京で再会した彼女は「初めまして」と告げる。小泉八雲『雪女』に着想を得て、夫婦、秘密、約束、信頼、そしてわからないものをわからないまま愛することを描く現代小説です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.14
- テーマ
- 名作を今の物語として読む
- ASIN
- B0HKTTJS95
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『名作、いまを歩く Vol.14 雪の日、言えなかったこと: 雪女を現代に置いたなら』より
十年前、水野湊は二十五歳だった。建設コンサルタント会社に入って三年目。道路や橋の状態を調べ、補修計画のための資料を作るのが主な仕事だった。華やかさはないが、自分には向いていると思っていた。 その日は長野県北部の山間部へ出張していた。翌年度に補修予定の県道を確認するためで、同行していたのは先輩の小川隆司だった。五十二歳。現場経験が長く、何か起きても慌てない人だった。 「雪、早いな」 午後三時を少し過ぎた頃、小川が空を見上げた。朝の予報では、雪が強くなるのは夜からだった。
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