BOOK · VOL.15
名作、いまを歩く Vol.15 橋の向こうで待っていた: 高瀬舟を現代に置いたなら
名作、いまを歩くを見る昼は介護施設で働き、夜は進行性の病気を抱える弟・直人を支える喜助。弟から「もう頑張れない」と告げられた兄は、生きてほしい願いと苦しみを終わらせたい弟の意思の間で揺れる。森鷗外『高瀬舟』に着想を得て、兄弟、介護、尊厳、罪、そして生と死の境界を描く現代小説です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.15
- テーマ
- 名作を今の物語として読む
- ASIN
- B0HLTZHC36
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『名作、いまを歩く Vol.15 橋の向こうで待っていた: 高瀬舟を現代に置いたなら』より
喜助の一日は、午前五時四十分に始まる。目覚まし時計が鳴る前に起きることのほうが多かった。隣の部屋から、弟の直人が呼ぶ声が聞こえるからだ。 「兄ちゃん」 大きな声ではない。昔なら聞き逃していたかもしれないほど弱い声だった。喜助は布団から出て、隣の部屋へ行く。 「どうした」 「水」 「待ってろ」 ベッドの横には、飲み物と薬とティッシュ、それから小さな呼び出しベルが置いてある。直人は自分でペットボトルを持つことが難しくなっていた。喜助がストローを口元へ運ぶ。 「もういい」 「二口しか飲んでないぞ」
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