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疲れて本が読めない夜も、本好きでいていい

本を開いたのに、同じ行を何度も読んでいる。文字は見えているはずなのに、登場人物の話が頭に残らない。仕事の返事や明日の用事が、ページの端から入り込んでくる。楽しみにしていた読書の時間なのに、今夜はうまく物語へ入れない。

そんな夜に、以前はもっと読めたのに、と思うことがある。通勤の間に一冊を読み終えたり、休日の午後を丸ごと物語に預けたりした自分が、少し遠く見える。本が好きだと言っているのに読めていない。その食い違いまで気になり始めると、本を開くことにも力が要る。

けれど、本を好きな気持ちと、今日読めるだけの余裕は、いつも一緒に動くわけではない。好きな料理でも、疲れた日には作れないことがある。好きな場所へ行くのにも、出かける準備がつらい日がある。本との関係にも、そうした波があっていいと思う。

一日の終わりには、言葉を受け取ること自体を休みたくなる夜もある。誰かの説明を聞き、予定を確かめ、自分の考えを伝えてきたあとで、さらに新しい文章を読もうとしている。物語に入りたい気持ちがあっても、今日は静けさのほうを選びたくなる。それも自然な選び方だろう。

読書を続けるために、読む量を決める方法もある。ただ、その約束が今夜の負担になっているなら、少し緩めてみてもいい。一章までという目標を、数ページに変える。数ページも重ければ、表紙を見て閉じる。本を手に取った時間を、できなかったことだけで数えなくていい。

眠いなら、本を閉じて眠る。目が疲れているなら、画面や文字から離れる。少しだけ読めそうな日には、以前好きだった短い話を選んでみる。内容を知っている本には、登場人物や舞台を一から覚えなくても戻れる気楽さがある。途中で閉じても、その先がなくなるわけではない。

新しい本を読みたいなら、その日の気持ちに合う長さを選ぶのもいい。短編を一つ読んで終える日もあれば、気になった一節を読み直すだけの日もある。長い物語を一気に読む楽しみとは違うけれど、数ページの中に、自分のために使えた時間が残ることもある。

読めない日が続くと、本棚が少しよそよそしく見えるかもしれない。それでも、気になる新刊の紹介を眺めたり、好きな表紙を思い出したりする気持ちは残っている。本を読む手が止まっていても、本に惹かれる自分までいなくなったとは限らない。

また読める日が来たとき、以前と同じペースに戻す必要もない。そのときの暮らしに合う読み方を、改めて探していけばいい。週末に数ページでも、寝る前に一つの短編でも、今の自分が無理なく楽しめるなら、その時間を大切にしたい。

今夜の栞が、昨日と同じ場所にあってもいい。本を閉じて、明かりを落として、今日はここまでにする。読み進められなかった夜を越えても、好きな本の名前を口にしたくなる日はある。その気持ちがあるなら、今夜も本好きでいていいと思う。

読めない自分まで責めてしまう夜に

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