「これ、欲しい」が一番危ない。『明日を売る店』1〜10巻のご案内
失敗を消せるボタン、自分の代わりに働いてくれる分身、誰にも嫌われない声。そんな商品が売っていたら、あなたはどれを買いますか。「全部」と答えたくなった方は、この店で少し長居することになりそうです。
細い路地の奥にある《明日を売る店》は、人の願いをかなえる不思議な店です。買う前には夢のように見えた品が、使い始めると少し違う顔を見せる。便利な道具を手にした人が何を選び、何を失ってしまうのかを描く、霧島宵人のショートショートシリーズです。
このたび、第10巻『店員が客になった日』まで揃いました。今回は1〜10巻の商品棚を、少しずつのぞいてみます。気になる品があったら、まずは物語の中でお試しください。
VOL.1
明日を売る店 Vol.1
失敗を消すボタン、あります
仕事で言い間違えたことも、帰宅してから思い出した余計なひと言も、ボタン一つで消せるとしたら。第一巻の店には、失敗を消せるボタン、本音が聞こえるイヤホン、一分だけ若返る腕時計などが並んでいます。
夜中に布団の中で始まる「あのとき、なぜあんなことを言ったんだろう」の反省会。あれを終わらせてくれるボタンなら、かなり欲しい。ただ、消してもいいものと、消したあとに困るものを、私たちはきちんと区別できるのでしょうか。
VOL.2
明日を売る店 Vol.2
誰かに代わってもらいたい日に
自分の代わりに働く分身、言いにくい謝罪を引き受ける人形、嫌な記憶を預かる箱。第二巻には、自分だけでは抱えきれなくなったものを、誰かに任せられる商品が並びます。
分身が出勤してくれたら、とりあえず目覚ましを止めて、もう一度眠りたいですよね。でも、仕事も謝罪も誰かに任せられるようになったとき、自分で引き受けておきたいことは何だろう。楽になりたい気持ちの、その先を描く巻です。
VOL.3
明日を売る店 Vol.3
面倒なこと、まとめて解決?
何でも片づけてくれるゴミ箱、必ず時間どおりに到着できる靴、なくしたものを呼び戻す笛。部屋の片づけも、遅刻も、探し物も、どうにかしたい人には魅力的な売り場です。
特に、何でも片づけてくれるゴミ箱は気になります。ただ、「不要なもの」を判断するのが自分ではなくゴミ箱だとしたら、少し話が変わってくる。便利な道具に任せたことを、あとから取り戻せるとは限らないのです。
VOL.4
明日を売る店 Vol.4
誰にも嫌われたくない
誰にも嫌われない声、悪口を褒め言葉に変える耳、その場の空気が見える眼鏡。第四巻は、人間関係で疲れた日に、思わず立ち止まってしまう棚です。
どんなお願いも断られなくなる名刺まであるのだから、営業の帰りに見つけたら危険かもしれません。けれど、いつも相手が「はい」と答えてくれる世界で、相手の気持ちはどこへ行くのか。感じよく生きたいという願いを、少し違う角度から見つめます。
VOL.5
明日を売る店 Vol.5|時間を少々
一日が二倍あれば足りますか
一日を二倍にする砂時計、五分前へ戻る腕輪、最後の日を延期するカレンダー。第五巻で売られているのは、いつも足りない「時間」です。
一日が二倍になったら、積読を読んで、部屋を片づけて、ちゃんと眠る。そう考えたはずなのに、仕事と用事も二倍詰め込みそうな自分がいる。時間を増やす前に、その時間を何に使いたかったのかを思い出したくなる五編です。
VOL.6
明日を売る店 Vol.6|幸運のお値段
当たりだけ見えたら、どうする?
当たりくじだけが金色に見える眼鏡、使っても財布へ戻る一万円札、負けを誰かへ渡せるコイン。第六巻の売り場には、なかなか目をそらせない品が並んでいます。
くじを買う前に当たりがわかるなら、当選発表までそわそわしなくて済む。財布へ戻る一万円札なら、つい何度も使いたくなる。そんな幸運を手に入れた人が、次に何を欲しがるのかを描く巻です。
VOL.7
明日を売る店 Vol.7|子どもだけが知っている
宿題を食べる犬は、味方ですか
宿題を食べる黒い犬、百点しか書けない鉛筆、成長を止めるランドセル。第七巻では、子どもたちが店の扉を開きます。
宿題を食べてくれる犬は、子どものころに出会いたかった商品かもしれません。ただ、子どもの願いは、大人が考えるよりずっと切実なことがある。少し笑える品の名前の向こうに、成長の途中にいる人の気持ちが見えてくる巻です。
VOL.8
明日を売る店 Vol.8|家族を直す道具
近すぎるから、言えないこと
仲直り専用電話、父親交換券、母の味を再現する鍋。第八巻では、家族の間にある痛みや距離が、商品の形になって並びます。
電話を一本かけるだけで仲直りできたら、と思う相手がいる。その一方で、仲直りしたいと言い出すこと自体が難しい日もある。便利な道具を手にしても、家族の気持ちまで簡単に直せるのか。ほかの巻より、少し静かに読んでほしい五編です。
VOL.9
明日を売る店 Vol.9|便利すぎる町
もう、一歩も歩かなくていい
絶対に空いている電車、誰も迷わない道路、苦情を吸い取る郵便箱。一歩も歩かなくていい靴まで登場する第九巻では、便利さが町全体へ広がっていきます。
通勤中に「電車がいつも空いていたら」と思ったことはありませんか。でも、寄り道も、道に迷うことも、誰かに尋ねることもいらなくなった町には、何が残るのだろう。読んだあと、いつもの帰り道を少しゆっくり歩きたくなるかもしれません。
VOL.10
明日を売る店 Vol.10|店員が客になった日
売る側にも、願いはある
これまで、さまざまな客へ商品を渡してきた店員。けれど、彼自身は一度も商品を使ったことがありません。《販売担当者は客ではない》という、店の決まりがあったからです。
第十巻では、その店員が一日だけ客になります。四十七年間売れ残っていた願い、値札のない銀色の鍵、初めて与えられた休日。誰かの願いを売り続けてきた人が、自分の願いを選ぶとき、いつもの店はどう見えるのか。今回は、カウンターの向こう側にも目を向けてみてください。
どの棚から、のぞいてみますか
失敗を消すボタンや、本音が聞こえるイヤホン。不思議な店の最初の商品棚へ。
この巻を見る 時間が足りないと感じる日に明日を売る店 Vol.5|時間を少々一日を二倍にする砂時計など、いつも足りない時間を扱う五編です。
この巻を見る 家族の話を静かに読みたい明日を売る店 Vol.8|家族を直す道具仲直り専用電話や、母の味を再現する鍋。近いからこそ言えない気持ちを描きます。
この巻を見る 便利な暮らしの先が気になる明日を売る店 Vol.9|便利すぎる町いつも空いている電車、誰も迷わない道路。便利になった町に何が残るのでしょうか。
この巻を見るどの巻も、一話ずつ楽しめるショートショートです。最初から順に読むのはもちろん、気になった商品がある巻から手に取っていただいても。店員のことが気になってきたら、ぜひVol.10ものぞいてみてください。
1〜10巻すべてKindle Unlimited対象です。各巻の作品ページには、あらすじとAmazonの商品ページへのリンクをまとめています。

