BOOK · VOL.48
人生を変える図書館 Vol.48|一人が気楽で寂しい
人生を変える図書館を見る一人で過ごす時間が好きな三十代の男性。誰にも合わせなくていい気楽さを感じながら、土曜の夜には「ずっと一人なのは怖い」という寂しさを抱えていた。司書の栞が手渡したのは、生活エッセイ『ひとりでいる技術』。一人の時間を守ることと、誰にも頼らずに生きることは同じではない。疲れ切らない大きさのつながりを探し、自分にちょうどいい人との距離を見つめ直す読書物語です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.48
- ASIN
- B0HP8J6C73
READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『人生を変える図書館 Vol.48|一人が気楽で寂しい』より
午後の図書館には、やわらかな静けさが広がっていた。窓の外では、薄い雲がゆっくり流れている。机に向かう人も、本棚の前で立ち止まる人も、それぞれが自分の時間を過ごしていた。 本宮栞はカウンターの奥で返却された本を整理していた。小説、エッセイ、暮らしの本、人間関係についての本。その中には、「一人で過ごすこと」をテーマにした本も何冊かあった。 一人でいることは、寂しいことだと思われることがある。 けれど、一人でいるからこそ落ち着く人もいる。 誰かと話さなくていい。 気をつかわなくていい。 予定を合わせなくていい。 静かな部屋に帰ると、ようやく自分へ戻れる。 それでも、ときどき。 その静けさが、急に広すぎる夜がある。 午後三時を少し過ぎた頃、入口のベルが鳴った。 「いらっしゃいませ」 三十代半ばくらいの男性が入ってきた。黒いジャケットに薄いグレーのシャツ。肩には小さなショルダーバッグをかけている。 男性は入口から少し進むと、館内を見回した。人の少ない窓際を見つけ、そこへ向かう。 けれど、すぐには座らなかった。 本棚を一周する。 小説の棚を見る。 エッセイの棚を見る。 暮らしの本を一冊取る。 数ページ読んで戻す。 また別の本を取る。 しばらくして、男性は小さくため息をついた。 「何かお探しですか?」 栞が声をかけると、男性は少し驚いて振り返った。
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