BOOK · VOL.50
人生を変える図書館 Vol.50|まだ足りない気がする
人生を変える図書館を見るどれだけ頑張っても「まだ足りない」と感じ、休むことにも成果を求めてしまう三十代後半の男性。司書の本宮栞が手渡したのは『足りた一日を見つける』という一冊だった。すべてを終わらせなくても、「今日はここまで」と一日を閉じていい。主人公の物語と、50冊続いた図書館の物語が重なるシリーズ最終巻。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.50
- ASIN
- B0HQ2KFV9R
READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『人生を変える図書館 Vol.50|まだ足りない気がする』より
午後の図書館には、秋の終わりを思わせる淡い光が差し込んでいた。窓の外では色づいた葉が風に揺れ、ときどき一枚ずつ歩道へ落ちていく。館内には、ページをめくる音と、遠くで本を棚へ戻す小さな音だけが響いていた。 本宮栞はカウンターの奥で、返却された本を整理していた。小説、エッセイ、仕事についての本、暮らしについての本。一冊ずつ状態を確かめ、決められた場所へ戻していく。 その中の一冊から、細長い紙が落ちた。 利用者がしおり代わりに使っていたらしいメモだった。 栞は拾い上げる。 そこには、一行だけ書かれていた。 「今日も、もう少しできた気がする。」 栞はしばらく、その文字を見つめた。 何もしていない一日なら、そう思うこともある。 けれど、人は不思議なもので、たくさんのことを終えた日にも同じ言葉を口にする。 できなかったことは残る。 できたことは、終わった瞬間から「できて当然」に変わる。 午後三時を少し過ぎた頃、入口のベルが鳴った。 「いらっしゃいませ」 三十代後半くらいの男性が入ってきた。白いシャツに濃い色のジャケット。肩には仕事用らしい黒いバッグをかけている。 男性は入口で一度腕時計を見た。 それからスマートフォンを見る。 数歩歩く。 またスマートフォンを見る。 栞は少し気になった。 「何かお探しですか?」 男性は顔を上げた。 「あ、すみません」
続きはAmazonで読むKindle版の作品ページが開きます。
SAME SERIES
同じシリーズの作品
SAME MOOD
