明日を売る店 Vol.9|便利すぎる町の表紙

BOOK · VOL.9

明日を売る店 Vol.9|便利すぎる町

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《絶対に空いている電車》《誰も迷わない道路》《苦情を吸い取る郵便箱》《一歩も歩かなくていい靴》《住民のいない便利な町》。暮らしを便利にする願いがかなうほど、町から寄り道や人の声、歩く力、そして住み続ける理由まで消えていく。便利さの先に残るものを描く、少し不思議で少し怖いショートショート五編です。

出版社
灯雨文庫
形式
Kindle版
巻数
Vol.9
ASIN
B0HL7CSPN4
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READ A LITTLE

物語の冒頭を、少しだけ。

『明日を売る店 Vol.9|便利すぎる町』より

高瀬直樹は、満員電車が嫌いだった。四十一歳。都内のIT企業で働いている。妻の沙織と、中学二年生の娘、結菜との三人暮らし。自宅から会社までは電車で五十分。そのうち三十分が、直樹にとって一日の中で最も嫌な時間だった。 朝七時四十二分。いつもの電車。ホームにはすでに人が並んでいる。電車が到着する。扉が開く。降りる人。乗る人。押される。押す。バッグを胸の前に抱える。誰かの肘が脇腹に当たる。スマートフォンを見ることもできない。 吊り革にもつかまれない。

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