BOOK · VOL.4
俳句の先生 Vol.4|冬月の手紙
俳句の先生を見る父の白紙に、今さら灯った言葉がある。亡き父が残した宛名だけの封筒。言えなかった「ありがとう」を、冬月の下で書きはじめる。父の机から見つかった、一通の封筒。表には、父の字でこう書かれていた。誠司へ。けれど、中に入っていた便箋は白紙だった。父が亡くなって七年。実家を手放すことになり、五十三歳の誠司は姉とともに家の片づけを始める。古い机。写真の端に写った父の指。細かく記された家計簿。大学の学費のために売られていたカメラ。毎年手入れされていた寒椿。無口で、頑固で、何も説明しなかった父。誠司は、そんな父に今も腹を立てている。言いたいことがあったなら、言えばよかった。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.4
- ASIN
- B0HB7DZFDM
Amazonで読むKindle Unlimited対象
READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『俳句の先生 Vol.4|冬月の手紙』より
父の机を開けたのは、葬儀から七年たってからだった。 小川誠司は、引き出しに手をかけたまま、しばらく動けなかった。 古い木の机だった。 天板の右側には、煙草を置いた跡のような黒い焦げがある。角は擦れて白くなり、真ん中の引き出しだけが少し傾いていた。
続きはAmazonで読むKindle版の作品ページが開きます。
SAME SERIES
