VOL.5
俳句の先生 Vol.5|春泥の靴
学校へ行けなかった日にも、歩いた跡は残っている。泥のついた靴で見つけた、自分だけの十七音。制服を着ることはできる。鞄の準備もできる。熱もない。嫌いな友だちがいるわけでもない。それなのに、中学生の菜々子は、玄関から先へ出られなくなった。母には「明日は行く」と言う。担任には「少し体調が悪い」と伝える。心配してくれる友だち・美月には、短い返事しか送れない。行きたいのに、行けない。理由を説明できない自分を、菜々子は責め続けていた。ある雨上がりの午後、学校とは反対の道を歩いた菜々子は、白いスニーカーを泥で汚す。その路地で見つけたのは、古い町家だった。
Amazonで読む