絵がやさしく語る夜に|青を抱いた少女の表紙

BOOK · VOL.1

絵がやさしく語る夜に|青を抱いた少女

絵がやさしく語る夜にを見る

閉館間際の展示室に佇む《青を抱いた少女》。会社で叱られた青年、別れに戸惑う学生、努力が報われなかった少年、自分を責め続ける女性が、その絵の前で静かに心をほどいていく。架空の絵画と人の物語が響き合う、やさしい夜の短編集です。

出版社
灯雨文庫
形式
Kindle版
巻数
Vol.1
ASIN
B0GMYJ94QN
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READ A LITTLE

物語の冒頭を、少しだけ。

『絵がやさしく語る夜に|青を抱いた少女』より

閉館まであと三十分という頃になると、美術館は独特の静けさに包まれる。昼間は人の足音や話し声に揺れていた空気が、夕方には丸ごと沈み、展示室全体がゆっくりと深呼吸を始めるように感じられる。その時間帯が、私はいちばん好きだ。 今日も展示室を見回りながら、最後の来館者を送り出す準備をしていた。そのとき、小さく擦れるような足音が背後で止まった。 「……あの」 振り返ると、紺色のスーツを着た男性が立っていた。二十代後半、あるいはもっと若いかもしれない。

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