BOOK · VOL.12
絵がやさしく語る夜に|傷ついた窓ガラス
絵がやさしく語る夜にを見る厚く塗られた油絵具に走る鋭いひびと、そこからこぼれる小さな光。傷つきやすさ、見えない未来への不安、守ろうとしてついた嘘、誰かを傷つけた後悔。《傷ついた窓ガラス》が、傷の形のまま光を受け入れることを静かに語る連作短編集です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.12
- テーマ
- 美術と絵画をめぐる物語
- ASIN
- B0H1YK1FGD
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『絵がやさしく語る夜に|傷ついた窓ガラス』より
展示室の奥に掛けられた油絵は、光を吸い込むような重厚な質感をしていた。《傷ついた窓ガラス》。厚く塗られた絵具が、ところどころ刃物で削られたように裂け、ガラスの向こうの景色はぼやけてよく見えない。 それでも、ひびの隙間から淡い光がこぼれていた。その前に、二十代後半の女性が立っていた。眉間に力を込め、絵の表面をじっと見つめている。 「……自分みたいだなって思いました」 「どのあたりがですか?」 「割れているところ、です」 短く答えたあと、彼女は唇を噛んだ。
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