BOOK · VOL.2
絵がやさしく語る夜に|雨を集める瓶
絵がやさしく語る夜にを見る窓辺に置かれた古いガラス瓶。そこに集まるのは、流れきれなかった雨粒と、言葉にならなかった気持ち。仕事に疲れた女性、後悔を抱えた男性、母親とうまく話せなかった少女たちが、《雨を集める瓶》の光に心を重ねていく、やさしい余白の短編集です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.2
- テーマ
- 美術と絵画をめぐる物語
- ASIN
- B0GNG466B8
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物語の冒頭を、少しだけ。
『絵がやさしく語る夜に|雨を集める瓶』より
春の終わりを告げるような冷たい雨が、朝からずっと降り続いていた。夕方になると美術館の窓ガラスは細い雨筋で覆われ、外の景色はぼんやりとかすんで見える。閉館まであと二十五分。展示室の見回りをしていると、奥のガラス窓の前に誰かが立っているのが見えた。 「あの……もう少しだけ、見ていてもいいですか?」 振り返ったのは、緑色のレインコートを着た女性だった。肩までの髪は濡れていて、バッグも雨に打たれて暗い色に変わっている。 「大丈夫ですよ。閉館まで少し時間があります」
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