BOOK · VOL.3
絵がやさしく語る夜に|灯りを持つ手
絵がやさしく語る夜にを見る小さな火をそっと包む両手を描いた《灯りを持つ手》。誰かを守りたい人、帰る場所を見失いかけた人、支えたい相手との距離に迷う人が、弱くても消えない灯りの前で立ち止まる。静かに寄り添う光を描く、やさしい余白の短編集です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.3
- テーマ
- 美術と絵画をめぐる物語
- ASIN
- B0GQD9QQM9
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『絵がやさしく語る夜に|灯りを持つ手』より
閉館時間が近づくと、美術館はゆっくりと夜の顔を見せる。照明は少し弱まり、展示物の影が長く伸び、館内の空気は静かに沈んでいく。その時間帯が私はいちばん好きだ。人の声が消え、絵がそれぞれの“本当の呼吸”を取り戻していくからだ。 その日の夕方、靴音を忍ばせるような来館者が一人いた。受付では「閉館まで十五分ですがよろしいですか?」と案内している声。その返事は小さく、けれど迷いのないものだった。やがて展示室へ現れたのは、黒のスーツに身を包んだ女性だった。 年齢は三十代後半だろう。
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