BOOK · VOL.9
絵がやさしく語る夜に|花を拾う影
絵がやさしく語る夜にを見る白と黒だけで描かれた、地面の花へ手を伸ばす影。拾えなかった夢、間に合わなかった言葉、選ばなかった未来、認められなかった努力。《花を拾う影》を通して、もう一度手を伸ばすことと失ったものとの和解を描く連作短編集です。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.9
- テーマ
- 美術と絵画をめぐる物語
- ASIN
- B0GXMXK3J8
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『絵がやさしく語る夜に|花を拾う影』より
展示室の奥に、モノクロの絵が静かに掛かっている。白い余白の中、地面に落ちた一輪の花。そして、それを拾おうとする人物の“影”だけが描かれている。顔はない。表情もない。あるのは、伸びる腕の輪郭だけ。 影は、ためらいながらも花へと近づいている。その前に、二十代半ばの女性が立っていた。コートの袖を握りしめ、影の手をじっと見つめている。 「……拾えばよかった」 小さな声が、静かな展示室に落ちた。 「何を、ですか?」 女性は少し驚いたように振り向いた。 「夢、です」 そう言って、目を伏せた。
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