氷見の表紙

BOOK · VOL.16

氷見

たびとぬくもりのものがたりを見る

富山県・氷見。波の音がゆっくりと寄せては返し、風がほんの少し甘くなる町。本書では、穏やかな春の海、漁港に漂う潮の香り、夕暮れの光につつまれる比美乃江大橋、そして夜の海の深い静けさを、地元の人たちのあたたかい言葉とともに歩きます。 旅人をそっと励ますような声が多いこの町は、どこか懐かしく、胸の奥の力がふっと抜けていくような時間を与えてくれます。急がなくてもいい。その場所に立つだけで、心が静かに整っていく——そんな旅の一冊です。 氷見の海風や人のやさしさを、一歩ずつ丁寧にすくい上げた物語。読み終えたあと、深呼吸をしたくなるような温度の旅をお届けします。

出版社
灯雨文庫
形式
Kindle版
巻数
Vol.16
ASIN
B0H4NWPV78
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READ A LITTLE

物語の冒頭を、少しだけ。

『氷見』より

氷見駅を出ると、まだ朝の光は薄く、海へ続く道の先に淡い霧がゆっくり漂っていた。空気に混ざる潮の匂いは、刺すような強さではなく、どこか丸みのあるやわらかい香りだった。鼻の奥がすっと澄んでいくようで、胸の中が軽くなる。 歩き出すと、道の脇にある小さな漁具店の前で、網を整理している男性の姿が見えた。手袋を外して声をかけてくれる。 「おはようさん。旅の人かい?」 「はい。きょう初めて氷見に来ました」

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