BOOK · VOL.2
絵の中の旅人 Vol.2|赤いヴェールの花嫁
絵の中の旅人を見る400〜800字版一枚の絵には、描かれた人がいる。描いた人がいる。そして、描かれなかった物語がある。美術館で働く新人学芸員・白瀬まひろは、企画展の準備中、一枚の華やかな婚礼画と出会う。題名は《赤いヴェールの花嫁》。赤いヴェールをまとった若い花嫁が描かれた、異国の宮廷画。祝福の赤、金の装飾、香炉の煙、楽器を持つ女たち。一見、美しい婚礼の記録に見えるその絵に、まひろは言いようのない息苦しさを覚える。 絵に呼ばれるように迷い込んだ先は、婚礼前夜の宮廷。そこにいたのは、国のために隣国へ嫁ぐ王女サーラだった。 赤は祝福の色。けれど、サーラは赤だけではなかった。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.2
- ASIN
- B0H6CNJKMG
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物語の冒頭を、少しだけ。
『絵の中の旅人 Vol.2|赤いヴェールの花嫁』より
雨の絵の前に立つと、まひろは今でも少しだけ息を整える。 美術館の展示室に掛けられた《雨のアトリエ》は、今日も静かに窓辺の女性を抱えていた。十九世紀のパリ。雨のアトリエ。三本の白い花。床に落ちた手紙。名前を失いかけていた画家エティエンヌと、窓辺のクララ。 あの絵の中へ入った夜から、三週間が過ぎていた。 けれど、まひろの中では、まだ雨が乾いていなかった。
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