BOOK · VOL.5
絵の中の旅人 Vol.5|黄金の空の下で
絵の中の旅人を見る黄金に輝く祭壇画の隅に、名もない少女が描かれていた。美術館で働く学芸員・白瀬まひろが触れたのは、十五世紀末の北イタリアで描かれた《黄金の空の下で》。絵の中でまひろが出会った若き画家ルカは、疫病で亡くなった町の人々を祭壇画へ残そうとしていた。 しかし、聖なる絵に描くことを許されるのは、聖人と天使だけ。 家族を失った孤児アンナは、ルカへ願う。 「私まで、いなくなったみたいになるのは嫌」 描いてはいけない少女。 残してはいけない名前。 ルカは、消えた人々の名を金箔の下へ刻み始める。 黄金の光は、悲しみを隠すためのものなのか。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.5
- ASIN
- B0HB1NHCGN
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物語の冒頭を、少しだけ。
『絵の中の旅人 Vol.5|黄金の空の下で』より
展示が終わった翌週、美術館にはいつもの静けさが戻っていた。 企画展「光のある部屋」で人気を集めた《青い陶器と朝の光》も、再び収蔵庫の棚へ静かに収められている。 まひろは、あの部屋の朝を何度も思い返していた。 空席。
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