BOOK · VOL.3
絵の中の旅人 Vol.3|雪の橋を渡る人
絵の中の旅人を見る400〜800字版一枚の絵には、描かれた人がいる。描いた人がいる。そして、描かれなかった物語がある。美術館で働く新人学芸員・白瀬まひろは、次の企画展示の準備中、一枚の静かな雪景色と出会う。題名は《雪の橋を渡る人》。白く降りしきる雪の中、橋を渡る旅人と、橋のたもとで見送る女性が描かれた一枚だった。 絵に呼ばれるように迷い込んだ先は、江戸の雪の日。旅人の名は平吾。絵師になる夢を抱き、江戸へ向かおうとしていた。 橋のたもとで彼を見送る女性、お絹は、本当は「行ってほしくない」と思いながら、その言葉を飲み込んでいた。言えば、彼の足を止めてしまう。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.3
- ASIN
- B0H7L2CTWY
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物語の冒頭を、少しだけ。
『絵の中の旅人 Vol.3|雪の橋を渡る人』より
美術館の収蔵庫には、季節がない。 温度も湿度も一定に保たれ、窓はなく、外の風も雨も届かない。春の花が咲いても、夏の熱が街を満たしても、秋の落ち葉が歩道を覆っても、収蔵庫の空気はいつも静かに冷えている。 けれど、その朝、白瀬まひろは収蔵庫の奥で、雪の気配を感じた。 まだ布を外していない一枚の絵の前だった。
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