BOOK · VOL.15
旅する鑑定士の事件帖 Vol.15|八つ目の扉
旅する鑑定士の事件帖を見る雪の残る温泉町。百年以上続く旅館の離れから、七つの扉を開く一本の鍵が見つかる。木札に残されたのは「八つ目は、開けないこと」という言葉だった。存在しない八つ目の扉と、六十八年間誰にも開けられなかった黒い箱。古い旅館に残された「返しもの」をめぐる鑑定ミステリーです。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.15
- ASIN
- B0HJ3VV3Z5
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物語の冒頭を、少しだけ。
『旅する鑑定士の事件帖 Vol.15|八つ目の扉』より
温泉町へ入るころには、山の斜面にまだ雪が残っていた。谷あいを縫う細い道の先に、古い旅館がいくつも肩を寄せ合っている。湯けむりの向こうに見えた木造三階建ての建物が、今回の依頼先だった。 湯ノ瀬館。創業は明治三十六年。増築を重ねながら百年以上営業を続けてきた宿だが、客足の減少と建物の老朽化から、今年いっぱいで本館の一部と古い離れを取り壊すことが決まっていた。草壁悠介を呼んだのは、四代目女将の水城志保だった。五十七歳。小柄で、話し始めると少しだけ早口になる女性だった。
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