BOOK · VOL.20
旅する鑑定士の事件帖 Vol.20|祝いの日に使わない鶴
旅する鑑定士の事件帖を見る北陸の老舗菓子店「朝倉菓舗」の蔵で見つかった、翼を広げた鶴の菓子木型。裏には「祝いの日には使わないこと」と刻まれていた。百年以上の菓子控帳に記録がないのに、木肌には何百回も使われた痕跡が残る。草壁悠介が側面の五十本の線と「戻」の一文字を手がかりに、祝いがなくなった日と人々の記憶をたどる旅情鑑定ミステリーです。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.20
- ASIN
- B0HN991L5D
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物語の冒頭を、少しだけ。
『旅する鑑定士の事件帖 Vol.20|祝いの日に使わない鶴』より
北陸の町には、朝から細い雨が降っていた。古い町家が並ぶ通りは濡れた石畳が鈍く光り、軒先から落ちる雨粒の音が一定の間隔で続いている。草壁悠介は傘を閉じ、通りの中ほどにある一軒の菓子店を見上げた。 朝倉菓舗。明治四十一年創業の老舗で、木造二階建ての店構えには古い格子戸が残っている。店内には季節の生菓子や干菓子が並び、雨の日にもかかわらず、午前中から客が途切れていなかった。
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