BOOK · VOL.18
旅する鑑定士の事件帖 Vol.18|届かなかった二十五通
旅する鑑定士の事件帖を見る山あいの町の旧郵便局で見つかった、二十五枚の絵葉書。二十五年間、毎年同じ十月十二日に同じ父親へ出され、切手も消印もあるのに一枚も配達されていなかった。さらに桐箱の底から、父が書きながら出さなかった返事が現れる。草壁悠介が父と息子の間に残された距離をたどる、旅情鑑定ミステリーです。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.18
- ASIN
- B0HL1VXRKC
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READ A LITTLE
物語の冒頭を、少しだけ。
『旅する鑑定士の事件帖 Vol.18|届かなかった二十五通』より
深野町へ入る列車は、一両だけだった。山と山の間を縫うように進み、川を二度渡る。九月の終わりだというのに、窓の隙間から入る風にはもう冷たさがあった。杉の山肌には薄い霧が残り、ときどき線路のすぐ脇まで迫ってくる。 草壁悠介が駅へ降りると、ホームにいた乗客は三人だけだった。改札の向こうには、かつて林業で栄えた町の名残が残っている。閉じた金物店、古い製材所、二階だけ格子戸を残した旅館。駅前の観光案内板には昭和三十年代の町並みを写した写真があり、その中央に今回の依頼先も写っていた。
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