BOOK · VOL.17
旅する鑑定士の事件帖 Vol.17|売らないための値札
旅する鑑定士の事件帖を見る閉店した古道具店から見つかった、作者不明の小さな木彫りの馬。首の値札は三百円、三万円、三十万円と何十年もかけて引き上げられていたが、売れた記録は一度もなかった。さらに底から現れた「〇円 返す」という四つ目の価格。草壁悠介が、物の値段と価値の違い、木馬と人々の間に残された関係をたどる旅情鑑定ミステリーです。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.17
- ASIN
- B0HKFL47XY
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物語の冒頭を、少しだけ。
『旅する鑑定士の事件帖 Vol.17|売らないための値札』より
宿場町へ入ったのは、昼を少し過ぎたころだった。古い格子戸の家が街道沿いに残り、軒下には屋号の入った木札が並んでいる。観光客向けに改装された店も多いが、一本裏道へ入ると、時間がそのまま止まったような建物がまだいくつも残っていた。 今回の依頼先も、その一つだった。岸本古道具店。昭和二十九年創業。昨年、二代目店主の岸本芳治が八十八歳で亡くなり、そのまま閉店している。草壁悠介を迎えたのは、芳治の娘、岸本奈緒子だった。六十一歳。
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