BOOK · VOL.5
旅する鑑定士の事件帖 Vol.5|古時計の止まった朝
旅する鑑定士の事件帖を見る午前五時十七分で止まった懐中時計には、ひとつの朝に託された命の記憶が刻まれていた。古道具鑑定士・草壁悠介のもとに届いた依頼は、山間の旧家から見つかった古い懐中時計を調べること。時計は動かない。針が指しているのは、午前五時十七分。 亡き祖父は几帳面な人だったにもかかわらず、その時計だけは直そうとせず、生涯止まったまま大切にしていた。 なぜ、その時刻で止まっているのか。なぜ、日記のある一日だけが破られているのか。そして、祖父が毎年書き続けていた届かなかった手紙の相手とは誰なのか。 手がかりは、昭和三十四年九月十七日。朝霧橋を襲った山崩れ。戻らなかった母と叔父。
- 出版社
- 灯雨文庫
- 形式
- Kindle版
- 巻数
- Vol.5
- ASIN
- B0H4JFTMMD
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物語の冒頭を、少しだけ。
『旅する鑑定士の事件帖 Vol.5|古時計の止まった朝』より
山間の村に朝霧が残っていた。 駅を降りたとき、草壁悠介は思わず空を見上げた。 空は晴れている。けれど、山の稜線にはまだ白い霧がまとわりつき、谷底を流れる川の音だけが、静かな村の中に細く響いていた。 十月の終わりだった。
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